佐川 庄司さん

白河の歴史・文化を見守りつづけて
~蔵の中の博物館、当時のまちの人々の粋を感じて~

 現在「藤田記念博物館」学芸員をつとめる佐川庄司さん。白河のまちには、昔から大切に受け継がれてきた歴史や文化。その魅力を守り、伝え続けてきた佐川さん。今回は、藤田記念博物館のお話を中心に、白河の歴史が生んだ貴重な文化財のお話を伺いました。

── これまでどのように白河の文化と
   付き合ってきましたか?

 白河市役所に就職後の20代後半だった当時、国の重要文化財などを扱う特別展を開催するにあたり、学芸員資格を取得しました。「白河歴史民俗資料館」に勤務したことがきっかけで、今まで白河の歴史や文化に深く携わってきました。歴史まちづくり室長、白河広域圏事務局長などを歴任したのち、白河市出身の芥川賞作家中山義秀を記念した「中山義秀記念文学館」館長を経て、藤田記念博物館の学芸員となり、現在に至ります。

── 藤田記念博物館って
   どんなところですか?

 藤田記念博物館は1967年に南湖公園内に開館し、白河藩主だった松平定信をはじめ定信とゆかりの深い人物の和歌、漢詩、絵画などを所蔵、展示してきました。東日本大震災の影響で建物が損傷したことで、登録有形文化財として指定されている白河市二番町の旧藤田家敷地内の蔵2棟をリノベーションし、蔵の博物館(通称「藤屋蔵」)として2021年4月に、新たにオープンしました。
 明治時代から昭和期に、今でいう街の商店主の人たちも書画骨董を収集するのがたしなみのひとつでした。家の床の間には季節ごとに合った掛け軸や骨董を飾り、来客をもてなすのが粋とされていました。そういう日本ならではの床の間文化を垣間見れるのも現在の藤田記念博物館の魅力のひとつです。

── 今回の展示会の魅力を教えてください

 この博物館には、松平定信に仕えながら江戸時代の画風に新風を巻き起こした南画家の谷文晁の作品や、藤田家とゆかりが深く、東山魁夷にも大きな影響を与えた日本画家、結城素明といった江戸から昭和の美術作品を多く所蔵しています。文明開化とともに訪れた近代化のなかで、西洋の文化の影響を受けて画風や考え方が混在する面白さや、白河の人々が愛した文化を目にすることができます。
 今回開催の「酉七コレクションと館蔵名品展」(6月22日まで開催)では、明治から昭和まで白河市の中心市街地で商家を営んでいた酉七家のコレクションを中心とした近代日本画の作品を見ていただくことができます。
また現在NHK大河ドラマ「べらぼう」にも登場する松平定信の墨跡もご覧いただけます。蔵という空間の中で鑑賞することで、まるでその時代にタイムスリップしたような感覚を味わえるのも魅力です。

── こみっと読者へ

 今回の展示会は、空き家になっている商家の方が維持管理が難しくなったことから、美術品の寄託を受けて、それらを展示公開するものです。時代の変化で受け継ぐことが難しくなってしまった貴重な文化をこれからも大切に次の時代へ守り繋いでいきたいですね。今後は7月には「松平定信の遺墨展2」、9月中旬には白河出身の書家、根本みきさんの展示販売会も予定しています。まちの中にある、どこかほっとするアットホームな博物館。ぜひ、気軽に訪れてみてください。
 

展示されている掛け軸
 
 

◆[プロフィール]◆

佐川 庄司(さがわ しょうじ)さん
藤田記念博物館学芸員

 
1957年白河市生まれ。
白河高校、桜美林大学卒業後、
白河市役所に入所後、
白河市歴史資料館に学芸員として勤務。
歴史まちづくり室長、白河広域圏事務局長、
中山義秀記念文学館長などを歴任後退職。
現在は白河市歴史まちづくり協議会副会長、
白河市文化財保護審議会副会長、
西郷村文化財保護審議会委員などをつとめ、
白河の文化やまちづくりに
深く携わっている。
 
 

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