夏奈色 ひとみさん
〝あなたのしあわせが わたしのしあわせ〟
やさしさに心が満たされる絵本の世界へ
丘の上に「ルーク」という名のカシの木が生えていました︱そよ風のように物語が流れる絵本「ぼくのしあわせ」。須賀川出身の絵本作家、夏奈色ひとみさんが紡ぐ物語の世界に触れてみませんか。
── 「ぼくのしあわせ」発刊の経緯は?
小さな頃から絵本が大好きでした。いつか自分の絵本を作りたいという夢があって、社会人になって、結婚し子育てしながらも創作してきました。
色々な絵本コンテストに応募もしてきましたが、デビューのきっかけになったのは文芸社えほん大賞です。入賞はできませんでしたが、翌年、文芸社からのお誘いを受けて自費出版という形で出したのが「ぼくのしあわせ」です。ストーリーは私が、絵は石川ゆかりさんというプロの方に描いていただきました。
── どんなお話が展開していく?
「ルーク」という名のカシの木が主人公で、すぐ近くで暮らす女の子と心を通わせていく物語です。アイデアは、かなり前に私自身が見た夢がもとになっています。夢のなかの私は、大きな木と並んで立っていました。
隣にいるのは立派な「木」で、なぜか気持ちが通じあっているのが分かった。その感覚が自分の中にずっと強烈に残っていて、それを膨らませてストーリーに仕立てました。
── 物語に込めたメッセージは?
2つあって、1つは孤独を感じている人に「あなたは決して一人じゃない。必ず応援してくれる存在はいるよ」というメッセージを伝えたかった。
もう1つは、「誰かの幸せを自分の幸せと感じることができたなら、それがあなたの本当の幸せなんだよ」ということ。やきもちを焼いたり羨んだり、人間には誰でもそういう側面があるけれど、そこから抜け出して人の幸せを自分のことみたいに喜ぶことができたら、それこそが自分にとっての幸せなんだって、この本で感じてもらえたら嬉しいです。
── デビュー作に続く作品は?
いまは2つ構想があり、まずは「白鳥」が主人公の本を今年中に出したいなと思っています。福島には白鳥がたくさん飛来しますが、なかには「帰れない白鳥」がいます。その姿に出会って、すごく勇気をもらうことができた自身の体験から着想した物語です。「ぼくのしあわせ」は文だけでしたが、あれから3年が経って今度は自分で絵も手掛けたいと水彩画も勉強してきました。
他にもストーリーは大体できていて、福島県の鳥キビタキが主人公のお話や、傘のお話も。1作目のカシの木も、それから須賀川で好きなところもそうですが、とにかく自然や野鳥に心を奪われてしまいまして、物語のモチーフはいつもそちらに傾いてしまいますね(笑)
── 絵本の楽しみ方を教えて!
絵本は子どものためだけの物じゃなくて、大人の心にも響くものだと思います。実際に、自分が読んで感動したり癒されたりする絵本はとても多い。だから皆さんにも、ぜひ手に取って読んでほしいですね。
現在は読み聞かせや絵本の選び方をアドバイスできる講師になるための勉強中です。昨年tetteで講演会をさせていただいたように、もっと絵本に興味がある皆さんと直接お会いして、絵本の世界や感動を分かちあう活動を広げていきたいです!
◆[プロフィール]◆
絵本作家
須賀川市生まれ
桐陽高等学校、福島大学卒
保育士として活躍する傍ら、
あぶくま時報火曜コラム執筆中。
2009年ごろから子育ての合間をぬって
夢だった絵本作家をめざし創作活動をスタート。
2022年「ぼくのしあわせ」でデビュー。
オンラインでは、文芸社のサイトをはじめ、Amazon、
楽天、セブンブックスのほか、
ザ・モール郡山2F「リブロ郡山」、
須賀川市の書店などで購入可能。
趣味/野鳥観察、花めぐり、
箏、食べ歩き