鈴木和幸さん

100年続いた理由ですか?
長い物に巻かれずに商ってきたからかな。

この春、創業100年を迎えた株式会社セルクルは、[あひるの洗たく屋さん]・[クリーニングレイール]・[コインランドリーペリ乾ランド]等のお店でおなじみのクリーニング会社。代表の鈴木和幸さんに、創業からの足跡や地域活動の経緯、地元・須賀川への思いを伺いました。
 

── 御社の歩みについて教えて下さい。

 大正9年、祖父が中町に立ち上げた洗濯店がはじまりです。当時は職人仕事で、自宅兼作業場に住み込みの丁稚さんをおいて営業していたようです。父は次男でしたが、長男が早世したため家業を継ぐことになりましたが、祖父とはそりが合わなかったようで、私が小学校に入ったばかりの昭和40年に、実家から独立する形でクリーニング会社を設立しました。その頃のクリーニング業界は機械化が進み、父も時代の波にのって須賀川のほかに郡山や会津若松にも工場を建て、会社を大きくしていきました。

── 三代目を継いだのはいつですか。

 平成8年です。子どもの頃から、地域やお客様のために熱心に仕事に向き合う父を見て育ったので、家業を継ぐことに迷いはありませんでした。青年会議所や商工会議所などの社会的な活動も、会社の発展と切り離せないものと考え、父に倣って取り組んできました。
 おかげさまで今年、創業100周年を迎えました。50年~60年の同業企業が多い中で、100年企業としてのいまがあるのは、地域のお客様のおかげだと感謝しています。

── 業界に一石を投じる活動が注目されていますね。

 社長就任の数年後に業界を批判する雑誌記事を目にしました。洗濯物を洗わず乾燥だけして返したり、必要のないシミ抜きで追加料金を取る会社があるという内容です。労働環境が劣悪な会社もいまだに多いですし、10年前には業界大手の不正が大々的に新聞に取り上げられたのでご存知の方もいるかもしれません。
 自分たちが信じてやってきたことと業界の慣習があまりにもかけ離れていることは衝撃でした。業界の実状を調査して本にしたり、NPO法人で活動しているのは、業界を健全化しなければ自社を含めクリーニング業界が立ち行かなくなると感じているからです。

── 地域活動について教えて下さい。

 私がクラシック音楽好きなので、ミュージシャンを呼んでコンサートを催したり、須賀川市内の福祉施設のクリーニングを無償で奉仕するなどのボランティア活動も続けています。
 最近は感染症の影響で消毒液が手に入らないお客様を対象に、限定数ですが、アルコール剤を提供させていただきました。クリーニングは生活に身近なものですからお役に立てることがあれば何でも取り組んでいきたいです。ちなみに、皆さんは意識されないと思いますが、クリーニングは衣類に熱を加えるので除菌効果が期待できるんです。あ、結局クリーニングの話になってしまいました(笑)。

── 地元への思いを聞かせて下さい。

 自社工場のある地域でも生活してきましたが、本社でもある須賀川に帰るたびに温かく思いやりのある街だと感じます。
 それから昨年は、円谷英二の伝記「大空への夢」を出版しました。家が監督の生家に近かったこともあり、子どもの頃から夢中になって観た円谷作品は私にとって特別。監督は、私のヒーローです。
 

◆[プロフィール]
鈴木 和幸(すずきかずゆき)
1959年須賀川市生まれ
株式会社セルクル 代表取締役社長。
NPO法人クリーニング・カスタマーズサポート理事長。あひるの洗たく屋さん・クリーニングレイール・コインランドリーペリ乾ランド等、展開する店舗は現在43店。環境に配慮した天然成分の洗剤を使い、安心安全な清潔文化を発信する一方、地域活動に熱心に取り組んでいる。座右の銘は[鶏口牛後]。長い物に巻かれるより、小さくても重んじられる企業・生き方が信条。
 
 

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